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賃貸と残置物  文・亀田考明

孤独死した人の家財は、誰が処分するのか

ひとりで亡くなった人の部屋には、家具も服も、書類も残る。それを片付けるのは誰で、どんな権限によるのか。相続の原則と、国の新しい仕組みから考える。

この記事の要点

  • 亡くなった人の家財は相続財産で、原則として相続人が片付けを決める
  • 相続人が見つからないと、大家さんは勝手に処分できず部屋が宙に浮く
  • 2021年に国が示した「残置物のモデル契約条項」で、60歳以上の単身者は生前に受任者を決めておける

原則は相続人

亡くなった人の家財は、相続財産として相続人に引き継がれる。片付けるかどうか、何を残すかを決めるのも、原則として相続人だ。賃貸住宅の契約も自動的には終わらず、相続人が借りる立場を引き継ぐ。

ここで難しいのは、相続人が遠方にいる、長く疎遠だった、そもそも誰か分からない、というケースだ。大家さんは、勝手に部屋を開けて家財を処分することはできない。

相続放棄をするつもりなら、家財の処分は慎重に。財産を処分すると相続を認めたとみなされるおそれがある(民法921条)。

大家さんが貸し渋る理由

この負担への不安は、高齢の単身者に部屋を貸すことをためらわせる理由になってきた。亡くなったあとの部屋の扱いが決まっていないことが、生きているうちの住まいの選択肢を狭めている。

国が示した「モデル契約条項」

法務省と国土交通省は2021年6月、「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を公表した。60歳以上の単身者が部屋を借りるときに、入居者があらかじめ「受任者」を決めておく仕組みだ。

  1. 入居者が亡くなったら、受任者が賃貸借契約を解除できるようにしておく
  2. 残された家財の処分や、指定した送り先への送付を、受任者に託しておく
  3. 処分は、亡くなってから一定の期間がたち、契約が終わってから行う。残すよう指定された品は除き、売れるものはできるだけ換金する

受任者には、推定相続人のほか、居住支援法人や管理業者などがなることが想定されている。

決めておくことは、生きるための準備

自分が亡くなったあと、部屋の鍵を開け、契約を終わらせ、家財を片付けるのは誰か。それを生きているうちに決めておくことは、残された人の負担を減らすだけでなく、ひとりで部屋を借りる自由を守ることにもつながる。死後のことを決めるのは、死の準備というより、ひとりで生き続けるための準備なのかもしれない。

よくある質問

孤独死した人の家財は大家さんが処分できますか
原則としてできません。家財は相続財産として相続人に引き継がれるため、相続人の判断が必要です。
残置物のモデル契約条項とは何ですか
法務省と国土交通省が2021年6月に公表したもので、60歳以上の単身者が部屋を借りる際に受任者を決め、死後の契約解除と家財の処分を託しておく仕組みです。
相続放棄をする予定ですが、部屋を片付けてもいいですか
財産を処分すると相続を認めたとみなされるおそれがあります(民法921条)。片付けの前に弁護士や司法書士に相談してください。

出典・参考

  • 法務省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」(2021年6月7日公表)
  • 国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」
  • 民法921条(法定単純承認)
亀田考明(死後活 編集長/「死後活」提唱者)。元読売新聞記者。遺品整理・特殊清掃の会社で経営に携わりながら、孤独死や廃棄物の現場から発信している。業界誌「月刊廃棄物」で「家財整理という生活支援」を連載中。

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